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ベストナース5月号|イリスもとまちの回想法への取り組みが紹介されました。

カテゴリ:お知らせ


ベストナース5月号

回想法」ってご存知ですか?

道内の看護職のための専門情報誌「ベストナース5月号」(平成26年5月1日発行)に、イリスもとまちの回想法への取り組みが紹介されました。

[連載]回想法で楽しくやさしく~診療回想法の理論と実際~ 第116回

小林幹兒(行動科学博士 産能大学経営情報学部講師 日本回想療法学会長)

ADLを低下させない取り組み(記憶の維持によりADL低下を防いだ事例)

公益社団法人全国有料老人ホーム協会、北海道連絡協議会主催による「事例研究発表会」が、道民センターかでる27で、平成26年2月27日に開催されました。この事例発表で、さっぽろ高齢者福祉生活協同組合「イリスもとまち」の職員、諸橋夏帆さん、鳴海茜さん、遠藤まなみさんが研究発表しましたので紹介します。(紙面都合により一部省略)

私たちイリスもとまちでは平成23年より日本回想療法学会からの指導を毎月受けながら、回想法を習得するため研鑽を重ねています。今回の事例発表ではイリスもとまちで実際に行っている取り組みを紹介させていただきます。

ADL記憶と回想法

ADL記憶とは10歳?15歳の頃の記憶のことです。詳しくは別紙日本心理学会発表論文集『ADLを低下させる記憶群の消失』をご覧下さい。この時期は、たとえば、食事のあとに食器を流し台に持っていく、排泄のあとトイレットペーパーで拭き、水を流す、やってはいけないことをやらない、期日までにしなければならないことを行うなど、単純な行動を獲得する時期でもあります。回想法とは子どもの頃の楽しい思い出をおしゃべりして楽しむことです。

回想法によってADL記憶を刺激することが、認知症の予防・進行抑制に効果があるとされています。そこで、音楽やおしゃべりなどを活用してADLを維持・回復させ、認知症予防や進行抑制につなげたいと考えました。

R-ADL(ラデル・記憶とADL)

R-ADL (Reminiscence & Action of Daily Life) のReminiscenceは日本語で 『回想』 や『思い出』という意味で、記憶とADLを同時に測定するチェックリストです。イリスもとまちでは3カ月に1度日本回想療法学会作成のR-ADL実施マニュアルに基づき実施しています。この目的は「記憶とADL」の状態を測定することです「ADL」 の維持・回復のために 「記憶」 の維持・回復を促すケアを行います。こうしたケアに必要な数値資料をR-ADLによって得ています。詳しくは後ほどグラフでご説明いたします。

ADLを低下させない取り組み

それでは、現在取り組んでいる4つの取り組みについて具体的にご報告させていただきます。

(1)音楽レクリエーション
音楽レクリエーションは2人の音楽療法士が月に2度実施しています。音楽レクリエーションでは音楽療法を行っています。音楽療法では、身体的・精神的・心理的働きを維持するために音楽の特性を活用しています。私たちが行った音楽レクでの事例を2名挙げたいと思います。

事例(1)K氏
「茶つみ」を歌ながら手遊びをする際に「せっせっせーのパラリトセって言うんだよ」と教えてくれました。それを取り入れて皆さんで手遊びをして歌いました。

事例(2)H氏
「スキーの歌」でスキーの思い出は?との質問に「手稲山で滑った」 と答え 「85才まで手稲山のてっぺんから下まで滑っていた」と話がより深まりました。
この2つの事例から、音楽をきっかけとして記憶を回復させることができました。

(2)グループ回想法
統きましてグループ回想法について発表します。グループ回想法で昔の遊びを毎月行っています。
(a)百人一首‥普段動作がゆっくりな入居者さんも真剣な表情で上の句を読むと、さっと手が出ていました。昔の遊びは職員がルールをわかっていてもあえて入居者さんに説明してもらったり教わることでご自身の昔の思い出もよみがえります。
(b)あやとり‥つつみ、ひと山、ふた山、かわ、かえる など次々と作っていきます。
(c)おはじき‥おはじきを見て「昔と同じだわ、こんなきれいな色だったわ」と話され、いろいろな地域の変わったルールも職員に教えて下さいました。
(d)お手玉‥「昔はあずきの中に鈴や〝たびのこはぜ″を入れて作った」と教えてくださいました。
写真を使ったグループ回想法では、サポートする職員はキーワードを確認します。例えばこの写真(省略) では、囲炉裏、土間、割烹着、飯台、上座、正座などが考えられます。一人の入居者さんばかりが主役にならないように職員も間に入りながら当時の事を想い出してもらいます。話が盛り上がってきたら入居者さん同士で話が進むこともあったり、普段口数が少ない入居者さんが多くを語り出したりすることもあります。職員も入居者さんが歩んできた歴史を少しでも知り会話を重ねていくことで、信頼関係を築いていくことにも繋がります。

(3) 言の葉ノート (個別回想法)
ちょっとしたおしゃべりやインタビューで入居者さんの記憶をたどり、それを「言の葉ノート」として記録しています。当時の思い出を映像イメージで思い出していけるように質問する話題の展開事例を紹介します。

Q‥小学校時代の思い出は何かありますか
A‥運動会
Q‥運動会のどんなことが記憶に残っているんですか
A‥運動会の最後にする演武のことは今でも覚えている
Q‥どんな演武が行われていたのですか
A‥他の学校にはなく、終戦のころまで行われていた。会津の戊辰戦争での言い伝えを4年生、5年生、6年生が袴をはいて木刀を腰に差して、最後は切腹して倒れると拍手が沸き上がった。
Q‥身につけていた物について教えてください
A‥袴の色は統一されていなかった。自分が着ていた物は思い出せないが、人に作ってもらっていた人もいたかもしれない。地下足袋をはいていた。木刀は自分で削っていた。長さは60皿くらいだったと思う
Q‥演武ではどのようなかけ声をされていましたか
A‥倒れる前に『君子の努めはこれまで?』と皆同じ方向を向いて倒れた。(はじめは覚えていないと言っていたが、皆で歌っていた事を思い出した)

これは一例ではありますが、単に当時の風景を田心い出して頂くのではなく、その人にとって具体的な一場面を映像イメージとして思い出して頂くようにしています。

(4) R-ADL評価
続きましてR-ADL評価についてご説明いたします。
R-ADL評価では平成25年に実施したものを数値化・グラフにしました。グラフでは点数が低いほど自立度が高いことを意味しています。ADLの観察項目は5段階法で評定し6分野30項目で構成されています。分野は、Ⅰ) パフォーマンス・躯体、Ⅱ) パフォーマンス・四肢、Ⅲ)衛生・全身、Ⅳ) 衛生・顔面、Ⅴ) 食事、Ⅵ) コミュニケーションです。記憶の質問は10項目を3段階で評定し10点から30点の範囲で採点します。

事例(1)S氏(男性、95歳、要介護度1)
脳梗塞、脳血管性認知症の既往があります。認知症高齢者の日常生活自立度はⅡbで杖歩行です。性格は温厚、物静かで、話好きではありませんが人付き合いが嫌いな訳ではない方です。普段は居室で過ごし、行事やレクリエーションへの参加がほとんどありません。
個別回想法で子どもの頃の記憶について映像イメージが思い浮かぶように行ったところ、子どもの頃の楽しい思い出をおしゃべりして発しみADL記憶への刺激ができたとともにADLの維持につながりました。普段多くは語らない方でも子供のころの楽しい話は会話の糸口になりやすいです。

事例(2)Kさん(女性、87歳、要介護度4)※省略

事例(3)H氏(男性、95歳、要介護度2)
大腸癌、左膝変形性膝関節症の既往があります。認知症高齢者の日常生活自立度はⅡaで、歩行器を使用しています。性格は温厚で話好きです。凡帳面で曲がった事が嫌いな方です。ベッドに座って居眠りしている時間が長いです。しかし、自分の幼い頃からの生活史を作り、子どもの頃の諸になると、とても発しそうに話されます。

S氏、Kさん、H氏3名とも1年間を通してグラフの形に大きな変化はなく、ADL記憶を回復・維持させることでADLも維持できているといえます。実践を通して職員が効果を徐々に感じ、関わり方の方向性が明確になってきています。課題としては、入居者さんの記憶力のレベルに合わせたきめこまかな記憶刺激を職員間で判断していくことが難しいと感じています。

今後の取り組み

今後の取り組みとして「入居者さんの笑顔」が少しでも増えることを目標にしています。ADLを低下させない為に取り組んでいる4つの取り組み、音楽レクリエーション・グループ回想法・言の葉ノート・R-ADL評価を充実させることで、新人職員の教育システム・介護量負担の軽減・ADL記憶の維持に繋がっていくと考え、今後もイリスもとまち全体として取り組んでいきます。ご清聴ありがとうございました。