HOME  »  福祉生協イリスからのご案内  »  機関紙『虹』  »  「虹」第28号

「虹」第28号

カテゴリ:機関紙『虹』

虹28号

  • 年の始めに -生存権を奪われるな!-[理事長 河原克美]
  • 特集 ご存じですか?リハビリテーション(1)
  • 特集 イリス南郷通を開設しました (誌上内覧会)
  • 〈その他〉イリスもとまち・イリス北8条・イリス南郷通、イベントレポート

年の始めに ―生存権を奪われるな!―

この冬の訪れは11月18日。北海道上空に氷点下35℃の強い寒気が流れ込んで全道に雪を降らせたが、これが初雪であった。札幌10月27日、旭川10月23日が平年の初雪の日なので三週間ほど遅かった。

北海道新聞の見出しを拾ってみると「道北・オホーツク大雪。80cmを超す降雪。交通寸断」(12/10)、「12月累積降雪・札幌11年ぶり2m超」(12/24)、「江丹別零下29.7℃・滝上零下28.6℃・全道酷寒」(12/25)、そして今冬の極め付きは「初雪そのまま根雪・札幌と旭川で初記録」である。

札幌管区気象台は12月15日、道内年末大雪の恐れあるとして「多雪に関する北海道気象情報」を出した。全道的に大晦日から2日まで比較的穏やかであったが3日・4日は日本海側が大荒れとなり「大雪仕事始め直撃」「JR237本運休」(1/5)となり都市間バスも全線運休となった。札幌は日本海に近い北部が荒れ、大部分は5日まで平穏であったが自然の動きの激しさを見せつけられた。

昨年9月、一人の友人が死んだ。高等学校は信州松本で私たちは新制高校三期の2年生であった。骨細、筋肉不足で虚弱体質から何とか抜け出したかった。山岳部に入れてもらった。同期2年生に偉丈夫が居た。高校生とは思えない先鋭的な登山・登攀をする手塚宗求である。夏休みの何日間かは合宿で、彼も一緒の北アルプスのカール地形、涸沢であった。しかしパーティを組んで独峰を極めるとか、山から山へと縦走するとなると体力も技術も違い過ぎて同行したのはただ一度、松本平の東方の山の谷側に屹立する烏帽子岩の登攀だけであった。彼と私はザイルで結ばれ、彼が先に取り付きから高さ30mの岩の頂上に登り「確保OKだ。登って来い」と叫んだのを今でも記憶している。

昭和26年、高校卒業し彼は進学の道を選ばず霧ヶ峰車山肩に山小屋を昭和31年に創設しコロボックルと名付け山小屋の若い親父となり、私は北海道の人間になり、それぞれの道を歩き一通の葉書の交流もなかったが、彼の著作『邂逅の山』を書店で発見し読み感銘を受け、北海道の海産物に手紙を添え「ファンからの贈物だ」と書いて、ちょうど今年で10年になろうか、彼からは著作を上梓する都度、手紙を添えて署名入りで届けて呉れる関係が続いた。お互い電話番号を知っていながら声を聴いて話をしよういう気持ちにならなかった。若い時代の想いが霧散してしまうのを双方で怖れていての事だろうか。

彼は登山家であり随筆家としても著名な串田孫一にその文才を認められ、彼の散文詩のような文章を「彼の内なる自然の産物」と評した。長じて山小屋の親父手塚宗求は日本ペンクラブと日本エッセイストクラブの会員になっている。

9月の或る日、殆ど衝動的にコロボックルヒュッテに電話をしたところ幸子夫人が電話に出て彼が9月某日、骨癌のため死去したと伝えられ言葉を失った。私には家内の四十九日法要を済ませて幾日か後の衝撃であった。家内と二人で霧ヶ峰のヒュッテを訪ねようと2年半ほど前に決めていた約束は果たす術なく、気を取り直して一人で訪ねたとしてもヒュッテの主は居ない。

去年起きた二人の親しい人の死は残された者が甘んじて受容すべき出来事である。去る12月16日に衆議院議員選挙があり自民党が「圧勝」した。自他共に評価は「敵失による勝ち過ぎ」である。安倍首相は選挙前の党首会談で「自衛隊が軍隊ではないという詭弁をやめるべきだと述べた」(北海道新聞2/28)。国防軍であり集団的自衛権の行使を含む改憲に意慾を示しているわけである。戦争は殺人ゴッコであり殆ど無差別に人を殺す。無数の人びとが殺されて肉身、知友の慟哭に耳をふさぐことが出来ようか。改憲の道は基本的人権、なかんずく生存権抹殺の道である。

「生存権とは自然権の1つであって社会の各員が人間らしく生存を全うする権利であり日本国憲法25条はこれを確認している。自然権とは人間が生まれながらに持っている権利であり、国家以前に存在し国家が与えたものではないから、国家はこれを侵害し得ないとされる天賦人権である」(広辞苑[第三版])。天賦とは天が与えた、という意味であり、生存権に関する法哲学的定義と言えよう。

いつも言うように「よりよい生活」を求めるのは生協の使命であるが戦争は生命も生活も破壊することを改めて確認したい、と思うや切である。

吹雪去り 寒月映えて 雪明

(文)理事長 河原克美