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「虹」第26号

カテゴリ:機関紙『虹』

虹26号

  • この時季に思う[理事長 河原克美]
  • 誌上セミナー 回想法で笑顔の老後(最終回)[日本回想療法学会会長 小林幹兒]
  • 特集 『イリス南郷通』の介護人生の最期のときまで住まい続けられるホーム
  • 〈その他〉第7回通常総会開催のご報告

この時季に思う

  ホームの月刊情報誌『イリス通信』6月号の拙文末尾に「ライラックアカシアの花夏の風」と一句付けたが、6月10日の脱稿であった。いつもより寒さを感じたこの冬もようやく終わると、津軽半島を乗り越えて来た桜前線は札幌で5月1日開花、翌2日には満開と報じられた。札幌管区気象台の見立てである。1971年から2000年までの平均では開花日5月5日、満開日5月8日だが、足速やの暖気に襲われて弾けるように一挙に咲いたわけである。もっと凄いのは旭川で、5月2日午前中に開花宣言、何と午後には満開宣言が出たと報じられたのには驚いた。札幌の標準木はソメイヨシノ、旭川のそれはエゾヤマザクラである。

  この事を取り上げて「異常気象」とは言われていない。手もとにある『異常気象学入門』(増内善信著)によれば「現代は異常気象が増えている。その全般的状況は(1)異常高温が増え異常低温は激減している。(2)異常多雨も異常小雨も増える。(3)ヒート・アイランドが強まる。(4)集中豪雨や竜巻など激しい気象現象が多くなる――」という。近年突然襲う竜巻や都市部での集中豪雨の多発などは異常気象現象の一端の現れだと思う。

  本誌前号「税と社会保障の一体改革」という言葉は、それだけでは解釈しようもないと書いたが『イエスの言葉・ケセン語訳』に倣って訳せば「税」の方は「消費税10%へ」であり「社会保障」の方は国民に自己責任を押しつけて公費の投入を削減する社会福祉基本法を制定すること、「最低保障年金」は棚上げ、「後期高齢者医療保険制度廃止」のマニフェストは放棄。「保険給付の対象となる療養の適正化」と称して軽い疾病は保険外=全額自己負担とする法改正へ。介護保険も「適正化」と称する国民負担増へ――とすることが明らかになった。そして無責任にも人間の生命を軽々しくみる原発再稼働の政治的ゴーサインである。

  政治と国民の間にはこのような異常気象が繰り返し現れて来る。

  古代ギリシヤの哲学者プラトンが著書『ゴルギアス』の中に我々のまわりに確立されるべき調和のある均衡が取り上げられている――と言い、フランスの歴史学者E・ル・ロワ・ラデュリは『気候と人間の歴史・入門』の中に次のように述べている。

  天・大地・神々、そして人間は、共に一つの共同社会を形造っている。互いに友情、愛、節制の尊重、公正、という感覚によって結びつけられている。賢者たちは、この共同体をコスモス、すなわちこの世の秩序と呼び、無秩序とか逸脱とは呼ばない。現代ではこうした均衡は断ち切られてしまった。神々はしばらく前に、さっさと逃げてしまったようだ。神々のご託宣は20年ほど前から気候変動に関する政府間パネルの悲観的予想がどうにか肩代わりしている。人間は多くの者が、この先見の明の欠如と無知の点で際立っている。天は工業生産とその類の諸活動がまき散らす温室効果ガスによって掻き乱され暖められゴチャゴチャにされている。大地は農民によって幾分搾取されすぎている。プラトンの神々・大地・天・人間の四重奏は、こうして変調を来しているように見える――と。

  人間が自然を壊して生ずる異常現象も人びとの生活や生命を脅かす政治もご免蒙りたいものである。今年は国連が定めた国際協同組合年。大資本の利益優先、無秩序な市場原理主義に対し、人びとの協同の力を基本にした共生セクター「協同組合」を強化発展させなければならない。

  わが生協はこの記念すべき年に『イリス南郷通』を開設する。我が身はこの記念すべき年に満80歳を迎え、このホームの住人となろうとしている。

夏の陽の 光親しき 薯の花

(文)理事長 河原克美