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「虹」第25号

カテゴリ:機関紙『虹』

虹25号

  • 『イエスの言葉 -ケセン語訳-』に学ぶ[理事長 河原克美]
  • 誌上セミナー 回想法で笑顔の老後(5)[日本回想療法学会会長 小林幹兒]
  • 特集 ホーム満足度 アンケート調査を実施 「イリスもとまち」集計結果のご報告
  • 〈その他〉イリス南郷通 建築現場レポート

この時季に思う

  去年の11月1日から今年の4月1日までの札幌管区気象台の観測地点での累計降雪量は平年より203cm少ない378cm。比較可能な最多量は2005年の548cmで最少が2007年の428cm。この最少よりこの冬の累計降雪量は150cmも少なかったということになる。4月1日には積雪は20cm残っていると報ぜられたが11日は南から暖かい空気が入り込んでこの日午前に札幌の積雪は0cmが宣言された。平年より一週間の遅れである。

  この冬の寒さは太平洋赤道域東部の偏西風の蛇行が大きく、海面水温が低くなるラニーニャの影響とシベリア高気圧が原因と言われているが、4月なかば過ぎてもまだ低温気味である。4月6日に東京の桜は満開だとの知らせで、これは平年並みだが北国は平年並みとは行くまいと思っている。

  4月は入学の月。幼かった頃を懐かしむ。5月はわが誕生月で満80歳になる。今年は殊更に5月晴れに恵まれる5月であってほしいと願っている。小学校に入る少し前から戦争たけなわになる前の低学年期に、ルーテル派の協会で開かれる「日曜学校」に行っていたことがある。クリスマス近くには生徒が出演して厩の中のキリスト誕生の寸劇に引き込まれていた想い出も懐かしい。聖書を買って貰い牧師先生の朗読をなぞらえて生徒みんなで声を出して読んだ。理解できないことだらけだったと思うが、判らないという記憶も忘却の彼方に去ってしまった。

  最近手にした『イエスの言葉・ケセン語訳』(山浦玄嗣)に「忘却の彼方に去ってしまった」「判らなくなった記憶」はこのような類のものだったのかも知れない、と胸を打つものがあった。「私は復活であり命である。私を信じるものは死んでも生きる」(ヨハネ伝)は古代ギリシア語からケセン語=岩手県気仙地方の言葉=に訳せば「この俺にァ、人ォ立ぢ上らせる力ァある。活ぎ活ぎど人ォ生す力ァある。この俺ァ語っ事ォ本気で受げ止め、その身も心も委ねるものァ、仮令死んでも生ぎるんだ」となる。「復活」とは「人を立ち上がらせる力」のことであり「命」とは「人を活き活き生かす力」のことであったのだ。

  「社会保障と税の一体改革」が喧伝されている。何をどのようにするのか内容が見えず、国政の「改革」なら国民の命や生活向上に役立てることを期待した人びとも少なくなかろうがこの「改革」の意味を『イエスの言葉』のケセン語訳のように翻訳すれば「社会保障の後退と国民負担の増加、大企業・富裕層優遇の政治推進」を指すことが明らかになったということであろう。その上、政府は日本の農業、漁業、林業等の一次産業に壊滅的打撃を与え、国民皆保険、医療制度を崩壊させる道を開くなどさまざまな分野でどこかの国の世界制覇への道を開き、国民をその犠牲にし国を売る環太平洋連携協定(TPP)への参加に動いている。

  今年2012年は国連が定めた「国際協同組合年」である。1999年に国連はミレニアム宣言を発し、「私たちは国内レベルでもグローバルレベルでも、開発と貧困の撲滅に資する環境を整備することを決意する」という大目標を掲げた。国連は国際紛争の解決で有効に機能したが、「貧困の撲滅」に有効な働きが出来ず、世界は殆ど解決不能と思われる絶対的貧困の増加に陥っている状態にある。日本でもワーキングプア問題や貧困、生活格差が拡大し続けて来た。

  このような状況のもとで国連は過去の反省も含めて2012年を「国際協同組合年」と定め、大資本の利益優先、行き過ぎた市場原理主義に対し人びとが共に協力し合って生きる非営利を経営原則とする「協同組合」に社会変革の挑戦を托すことになったわけである。国際協同組合年全国実行委員会の代表になられた内橋克人さんは「国連は過去の反省を込めて2012年を国際協同組合年と定めたのです。〈競争セクター〉とは全く異なる原理を持つ〈共生セクター〉に社会変革の挑戦を托そうとしている、と私は考えます。この〈共生セクター〉の担い手こそが協同組合ではないでしょうか」と述べている。(『日本生協連機関誌』1月号)

  生活協同組合は地域に根ざす組織であり地域の人びとが力を合わせて生活の向上を目指す〈共生セクター〉である。今年秋に、わが生協が開設する『イリス南郷通』は国際協同組合年の、名実共に記念にふさわしい事業内容を創り上げなければ――と新たな決意を求められている。

(文)理事長 河原克美