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「虹」第23号

カテゴリ:機関紙『虹』

虹23号

  • 秋に思う -地球は怒っている-[理事長 河原克美]
  • 誌上セミナー 回想法で笑顔の老後(3)[日本回想療法学会会長 小林幹兒]
  • 誌上セミナー 高齢者の住まい(8)[専務理事 小松徹人]
  • 特集 ノーベル化学賞受賞の鈴木章北大名誉教授、入居者の皆さんと交流
  • 〈その他〉イベントレポート

秋に思う -地球は怒っている-

  今年の日本列島への台風の上陸は7月20日、9月3日、9月21日の3回となった。9月3日の台風11号は南の海上からゆっくり北上して日本列島南西部に強風と大量の雨を降らせ、高知県に上陸、4日に日本海に抜けたが時速10㌔前後と遅かったことと、暴風域が400㌔と巨大で台風周辺の積乱雲が四国と紀伊半島を長時間覆い、台風の移動に伴って周辺の湿った空気が雨となって降り続けて洪水と土砂災害をもたらす結果となった。更に日本海を北東に進み熱帯高気圧に勢力をおとしたが、東側の太平洋にやって来た13号との挟撃を受け石狩、十勝地方で記録的な豪雨となり、音更川、芽室川などが氾濫した。

  9月21日には台風15号が静岡に上陸、猛烈な強風と雨が首都圏を荒らし、茨城県と福島県との境あたりから太平洋を北上、釧路・根室を荒らし東の太平洋上に抜け去った。原発事故とそれにまつわる人間の仕業に、地球が怒っているのではないかとのつぶやきが聞こえて来る。

  東日本大震災と原発事故は復興・復旧の歩みが遅い。福島原発事故の修復はいつ終焉するのか、放射能汚染対策も見通しが立っていない。この間、次々と国民の前に明らかにされて来た九州電力に始まった原発立地住民対象の「地域説明会」や「公聴会」での、いわゆる「やらせ」問題は、北海道でも泊原発をめぐって過去に北電が手を染めて来たことが日本共産党への内部告発で明らかになり北電もその事実を認めざるを得なかった。原発開発のために手段を選ばず、世論を捏造して生命の危機を怖れる住民の意思表示を強奪した暴挙というにほかない。

  日本生活協同組合連合会が7月末に実施した『節電とエネルギーに関するアンケート結果報告』の中の「発電電力量の電源別割合」への回答結果は火力発電を増やす19.9%、原子力発電を増やす0.6%、水力発電を増やす50.9%、再生可能エネルギーを増やす93.3%であり、減らすと答えたエネルギー源は火力発電10.8%、原子力発電76.4%、水力発電1.1%、再生可能エネルギー0.2%となっている。「現状維持」と「わからない」としたのはそれぞれ火力56.2%・13.0%、原子力10.7%・12.3%、水力37.0%・11.1%、再生可能2.6%・4.0%であった。

  十万年という長い期間で何が起こるかわからない。より高度の安全性を、と言っても「安全神話」であることには変わらない、という意識がこのアンケート結果に現れているのではないか。「安全神話」に乗せた方も電力会社からの「寄附」と原発三法の誘惑に負けた方も以て銘すべきである。乗せた方と乗せられた方の関係に、悪魔メフィストテレスに魂を売ることを約束し、その召使いとなって働いたファウストとの関係を見る思いがしてならない。

  仏教学者の水野弘元は「“仏性”という言葉がある。生きているものすべてが悟を得て仏になる性質を持っていてそれが仏性である。仏教の教えはいかなる点においても近代的であり理想的であろうか」と、仏性の近代性を自問し次のように自答している。「第一は批判主義的であること、第二は人文主義的であること、第三は平和主義的であること」として説明しているが、このうち第二について次のように述べている。「これはすべての人間および生物一般の生命を尊重し、人格の尊厳を認めるものである。仏教では“一切衆生悉有仏性(一切の衆生には悉く仏性がある)”といって、すべての人びとに理想実現の能力としての仏性を認め、互いに仏性を尊重しこれを開発させていくようにすべきことを説いている。したがってそれは人格主義であり平等主義でなければならない。そしてさらに民主主義におよぶものである」(『仏教の基礎知識』)

  原発の問題を経済・政治側面のあり様による議論だけではなく、生命・尊厳にまつわる倫理的な意義に関わっても考える必要があると思えてならない。「この民にしてこの政治あり」では情けないではないか。

空青く ポプラの葉踏み 秋を行く (愚作を一句)

(文)理事長 河原克美