HOME  »  福祉生協イリスからのご案内  »  機関紙『虹』  »  「虹」第22号

「虹」第22号

カテゴリ:機関紙『虹』

虹22号

  • 夏に -原発を考える-[理事長 河原克美]
  • 誌上セミナー 回想法で笑顔の老後(2)[日本回想療法学会会長 小林幹兒]
  • 特集 介護予防で生涯現役を目指す!健康に生きるコツ(2)
  • シリーズ 生涯現役(5)[入居者 Aさん]
  • 〈その他〉イベントレポート

夏に -原発を考える-

ふるえあがるような冷気の日と夏らしい暖気の晴天が日替わりのようにやって来る、今年は変な札幌の初夏である。

北海道の夏の木としてよく詠われるのはポプラだが、白樺もこの北国の夏の木として推挙したい。冬がようやく明けて雪解けが始まると冬枯れの木々を透かして見える山肌に淡い緑をほんのりと浮かせて白樺の春が始まり感動を与えてくれるが、深い緑の中に純白の樹皮を輝かせる白樺も趣ひとしおである。内地の方では高原や山岳地帯に見られるが、北海道では低地に育つ冷涼な土地を好むカバノキ科カバノキ属、本名はシラカンバである。

北国に住む人びとにとって夏は格別な季節で、長い冬を抜けて春を迎えたかと思うとキタコブシ、モクレン、ウメ、モモ、サクラを送り、ライラック、アカシアとなれば盛り上がる緑に包まれた夏に入るわけで、時には暑く、しかし朝晩は冷涼なこの季節に身を置き秋近くを自覚して殊更に夏の値打ちを高める。暦の上では立夏から立秋の前日までが「夏」で、天文学では夏至から秋分までとまぎらわしいが気象学では大体6、7、8の3ヵ月で生活感覚からは納得のいくところである。室内にストーブを据えて石炭や薪を燃やしていた時代の札幌では札幌祭(6/15)になったらストーブを片付けて、8月のお盆になったら据え付ける生活習慣があったが、短い夏を如実に物語っていて面白い。

その夏も6月を終り「盛夏」と呼ばれる時季に入ったが、気分は一向に冴えない。東日本大震災にまつわるさまざまな問題が、頭の中、胸の内を去来して止まらないからである。

原発事故に関連する問題。事故発生から4ヵ月になろうとしているが原発問題は次のステージに上がっている。原子力による発電を今後も続けるのか、やめるのか。「日本世論調査会が実施(6/11・6/12)した全国世論調査の結果、現在54ある原発について“直ちに廃炉する”“定期検査に入ったものから廃炉する”“電力需給に応じて廃炉する”とした人が合わせて82%に上がり“現状維持”の14%を大きく上回った。回答からは福島第一原発事故が収束せずその後の対応をめぐる政府、東京電力の不手際が指摘される中、国が推進してきた原発政策への不信感の強さが浮き彫りになった」(『北海道新聞』6/19朝刊)のである。

「原発の安全性については国が責任をもって丁寧に地元に説明したい」(海江田経済産業相)、「(海江田氏の考えと)全く同じだ」(菅首相)と言っているのでは首相の表明した「エネルギー基本計画の白紙見直し、自然エネルギー重視への政策転換」など出来るわけないではないか。イタリアでは国民投票で「脱原発」を確認した。先駆は2000年にシュレーダー首相が産業界の抵抗を押し切って進めたドイツの脱原発政策である。その脱原発の理由は(1)原子力は人類が制御できない科学技術である(2)再生可能エネルギー政策へ転換する必要性(3)使用済み核燃料の処分場所の解決策がない、そして放射性物質の半減期は恐ろしく長い、と三つの根拠に依っている。菅首相が議長の「新成長戦略実現会議」は政府がエネルギー政策の見直しを行う場だが「今月7日の同会議では、国家戦力室が作成した“革新的エネルギー・環境戦略について”なる資料が配られました。そこでは今後の原子力について“原子力事故・安全の徹底検証”“最高度の原子力安全の実現”が掲げられました」(『赤旗』6/20)と報道されている。 またしても安全神話を作り上げようと言うわけである。「この会議には日本経団連、経済同友会、日本商工会議所の“財界御三家”トップが名を連ねこれまで法人税減税など財界・大企業のための“成長戦略”を練ってきました」(前出)とあり、ここで原発見直しなど出来るはずはなかろうと思う。

仏教の方のことであるが、人間の心にある根源的な慾望をサンスクリット語で「トリシュナー」という。漢訳して「渇望」であるが衝動的で前後の見さかいなく実現しなければやまない強烈な本性のことである。人間が無害にすることの出来ない放射性物質に欺瞞に満ちた「最高度の安全性」を付けて原発を推進しようとする根性は戦争をせずにはいられない指導者たちと同類のトリシュナーによるものと言えるであろう。調査対象にならなかった国民のそれぞれが非人間的なトリシュナーに取り込まれず82%の人びとの中に加わってほしいと願うや切である。

(6/28脱稿)

原発に 心いためて 一句出ず (愚作を)

(文)理事長 河原克美