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「虹」第21号

カテゴリ:機関紙『虹』

虹21号

  • 春に -東日本大震災に思う-[理事長 河原克美]
  • 誌上セミナー 回想法で笑顔の老後(2)[日本回想療法学会会長 小林幹兒]
  • 特集 介護予防で生涯現役を目指す!健康に生きるコツ
  • シリーズ 生涯現役(4)[組合員 Tさん]
  • 〈その他〉イベントレポート

春に -東日本大震災に思う-

――3月9日の夜、テレビを見ていたら“鹿児島で河津桜が咲いています。平年より20日の遅咲きでしたが日本で一番早い桜の開花です”と報じていた――で始まる春という季節と物象変化のことなどを書き出して本稿が始まるはずであったが、2日後の3月11日、もの凄い地震と大津波が東日本を襲いわが国での史上最大の自然災害となり、追い打ちをかけての原子力発電所の事故発生で春の風情などに触れる気持ちはすっかり失せてしまった。

  亡くなられた方がたへは深甚なる哀悼の意を捧げ、被害を受けられた方がたに心からお見舞い申し上げる次第である。また敏速に情報を収集し機敏に支援活動に取り組んだ日本生協連、全国有料老人ホーム協会など多くの組織や個人に敬意を表さずにはいられない。わが生協も微力ながら支援物資を送る等、に取り組んできたところである。

  国や経済界は原子力にエネルギー源を求め、わが国に設置する原発は絶対安全だとする「安全神話」を語り続け、予定地に地域振興交付金という土産をちらつかせ説得してきたにもかかわらず、「想定外」だったと言い訳するばかりであった。福島第一原発の設計者が外国人特派員協会での記者会見で「1号機着工時は米国GM社の設計をそのままコピーしたので津波は全く想定していなかった」と語った(『北海道新聞』3/17)が、これに対する国の機関や東京電力の反論は届いて来ない。参議院予算委員会(3/29)でこの安全神話にまつわる想定外の「想定」について大門議員(共)の質問に経済産業相は想定していた津波は3.1mで今回の津波は約4.5倍の14mであることを明らかにした(『赤旗』3/30)。「想定しなかった」という設計者の話とのギャップは寡聞にして届いていない。

  この原発の放射能漏れで東京電力の下請け会社の労働者たちが被曝した。今後発生する被曝の事態は予測がつかない。本来一人一人が保持すべき放射能計測器が何人かに1個という報道に慄然とした。東京電力という巨大企業のモラルのひどさを見た思いである。経団連の米倉会長が記者会見で「1,000年に1度の津波に耐えているのは素晴らしいこと。原子力行政はもっと胸を張るべきだ」と語ったことを、各誌が報じたが産業の発展に人間の生命は犠牲になっても仕方がない、という根性が表れているではないか。

  この大事件に関する「公共報道機関」=NHKの報道を批判する人は多い。大事件を他人事のように発言する学者・研究者が登場するが「津波の想定はしなかった」「想定は現実の1/4の高さだった」ことについて、そのような原発が設置された経過についての反省は全く見聴きすることがなかった。原発着工前に設計についての厳格なチェックが当の電力会社、そして国の機関において実施されたのか。実施された結果なら関係した学者・研究者は科学者としての良心とその専門性の水準の低さを恥じて責任をとるべきであり、チェックしなかったとすれば国と電力会社の重大な職務放棄であろう。公共報道機関であれば原発推進のお先棒を担ぐご用学者の登場ばかりでなく原発開発に批判的な学者・研究者も登場させるべきだとの声をしばしば聞く。今回の災難はこれから先の原発づくりはやめてエネルギー転換の道を行けとの警鐘ではないか。

  ノーベル文学賞作家大江健三郎さんは今回の災害についてフランスのル・モンド紙に「核の炎を経験した日本人は、核エネルギーを産業効率の観点で考えるべきではない。つまり成長手段として追求すべきではないのだ」「原発がいかに無分別なものかを証明した今回の過ちを繰り返すことは広島の犠牲者の記憶に対する最悪の裏切りだ」とのコメントを寄せている。肝に銘ずべきことである。(3/31脱稿)

延齢草 花咲く時季の訪れに 過ぎし昔の その郷を想う (愚作を一首)

(文)理事長 河原克美