HOME  »  福祉生協イリスからのご案内  »  機関紙『虹』  »  「虹」第19号

「虹」第19号

カテゴリ:機関紙『虹』

虹19号

  • 猛暑の夏から秋へ -爽やかなノーベル賞-[理事長 河原克美]
  • 特集 鉄東地区・アマとホップのマチ時代模様
  • 誌上セミナー 高齢者の住まい(6)[専務理事 小松徹人]
  • シリーズ 生涯現役(2)[入居者 Tさん]
  • 〈その他〉イベントレポート

猛暑の夏から秋へ -爽やかなノーベル賞-

  猛暑続きの夏であった。北海道でも各地で暑さの記録を更新した。気象庁の『全球異常気象観視速報』では、この夏の高温異常気象は地球上の9地域で発生したとあった。その中に中国北東部の西側からモンゴルを通りカスピ海近くまでの帯状の地域があったので、モンゴルの首都ウランバートルに住む友人ブヤン君に電話して様子を聞いたところ「こんな経験は初めて」との事であった。ウランバートルでは8月のこの日、最高気温は30℃。8月の平均気温は平年15℃というから相当なものである。

  7月は異例の高温多湿でいつものように梅雨知らずとはいかず、8月はお盆を境にして秋風が訪れるのに馴れ親しんで来た北海道の暮らしであったが、9月に入っても8月を引きずるように30℃を超える日もあり「残暑厳しき折」の挨拶がしばらく続いた。

  『気候と人間の歴史』(E・ロワ・ラデュリ)によると、イギリス中央部の6・7・8月の平均気温が17℃以上になった年は18世紀には1回、19世紀2回、20世紀6回と急増し、21世紀に入って2003年に発生、その前が1995年であったので、その間隔が短いと書かれているが、今年もこれに該当すると思われ高温異常気象はスピードを上げて現れて来ていることがわかる。

  紅葉は、といえば例年のようにあざやかに訪れたようには見えない。一日の最低気温が8℃以下になると紅葉が始まる、ということだが、8℃を境にしてダラダラしているので紅葉も黄葉も薄暗い感じに見えて冴えざえとしない。

  そんな折、ノーベル化学賞に鈴木章さんが決った。鈴木さんが陽子夫人と結婚された折、中学時代の恩師が仲人役を務めた縁が端緒となり、仲人夫妻の娘がわが愚妻となった。鈴木夫妻のすぐ近くに住んで、よく晩酌にお誘い下さったり、押しかけたりした間柄であったので受賞の報に欣喜雀躍たる思いであった。

  仏教の方の言葉に「三昧」というのがある。「サンスクリット語samâdhiの音写語で宗教的な瞑想の世界を表現する語。インド諸教、ことに仏教はこの三昧を最も深く体系的に説きその実践方法を示している」(『仏教語入門』宮坂宥勝)とあるが、徹底的に専念すること、あるいは専念する心を意味する言葉であるが世俗には釣三昧やゴルフ三昧はまだしも放蕩三昧などひどいのもあるが読書三昧もよく使われて来た。鈴木さんは研究三昧であったのだ。

  「いつも右手にテレビのリモコン、左手に晩酌のグラスを持ってゴロゴロしていました」「お父さんが何の仕事をしているのか中学生ごろまで分からなかった」と次女里香子さんは北海道新聞の取材に答えておいでだが家庭生活と研究三昧のけじめある鈴木さんであったことがよくわかる。

  そして爽やかなのは「国や企業から研究費や奨学金をもらっているのにあつかましい」として特許を取ろうとしなかった事であり、研究の成果は実用化が進み世界じゅうの人びとの健康と生活向上に貢献して来た事である。

  政権与党の党首選も終わり改造内閣が発足し、新しい政治の舞台が幕開けした。先送りした高齢者医療保険制度で高齢者は救われるのか。失業者は、低所得者の暮らしはどうなるのか。農業・林業・漁業に従事する人びとの生活と食糧自給対策をどうするのか。 1795年、哲学者エマヌエル・カントは『永遠平和のために』の中に「2種類の政治家がいる。モラルある政治家と政治的モラリストである。モラルある政治家は国家の英知をモラルと共に考える。政治的モラリストは政治家としてモラルを利用しようとする」と書いた。

  鈴木さんの爽やかさを見習って、政党助成金と称して自分たちの主義主張のために国民が納めた税金を使うようなさもしい事はやめて、善政三昧になってほしいと願わずにはいられない。

雪虫の 薄暮に白く 秋雨あけ (愚作を一句)

(文)理事長 河原克美