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「虹」第18号

カテゴリ:機関紙『虹』

虹18号

  • この夏に思う[理事長 河原克美]
  • 誌上セミナー 高齢者の住まい(5)[専務理事 小松徹人]
  • 特集 ホームの近くで家庭菜園を始めました
  • シリーズ 生涯現役(1)[職員 相高智]
  • 〈その他〉運営懇談会より・イベントレポート

この夏に思う

  過ぎし3月は暖気を感じて雪融けも進んでいると思ったら急転直下、寒気と雪が訪れ、4月は3月に負けじとばかりに寒気と冷たい雨が波打つように襲って来て、5月は桜の開花も遅れ気温が低いため開花期間が長く、お蔭で桜を賞でる期間が長いという現象が起きた。思い起こしてみると今年の3月から5月までは「同じような気圧配置が長く続いて、熱波や寒波、さらには何個もの台風やハリケーンがほぼ同じコースをとって襲来するという異常気象」(『異常気象学入門』増田善信)だったのかと妙に感心してしまう。「30年間に1回以下の平均的には現れない気象現象」が気象庁の定義とのことである。平成7年12月から翌年1月にかけての極端な寒波襲来で『理科年表』(平22版)でこの12月の平均気温(主要11都市30年間統計)を見ると大雑把にいって3℃から5℃も低かったことがわかる。

  平成20年の夏は、京都の7月が全日真夏日。うち猛暑日が12日間もあった。北陸、近畿、関東地方で記録的な集中豪雨が発生、神戸市内を流れる都賀川が10分間で1.3m増水。8月9日には岡崎市で1時間146㎜の降水量が記録された。そして北海道を含む各地で7月だけで21個の竜巻やダウンバーストの発生が観測されたという。30年間に1回以下の発生――という定義はそろそろ怪しくなってきているように思えるがいかがなものであろうか。

  今年は春の異常低温で桜の開花期間が長く思わぬ恩恵をもたらしたが札幌も例外ではなかった。5月のライラックも遅咲きであったがライラック祭も終わりアカシアに夏をバトンタッチである。

 ♪ 時計台の鐘が鳴る
         アカシアの木に陽は落ちて
               静かに夜も更けて行く
                       山の牧場の羊の群も
                             黙ってお家へ帰るだろう
                                   時計台の鐘が鳴る

  高階哲夫作詞作曲の歌で一時代昔の札幌の風情が湧き上って来る。この時計台は北大の前身札幌農学校の演舞場に明治14年に取り付けられたアメリカ製のもので、時を告げる鐘の音はaの音.つまり高音譜表上のハ調のラの音.で今は周囲の騒音に打ち消されがちだが、何故か心にやすらぎを与えてくれる。

  少し脱線してしまった。異常気象のことだが、この自然現象で生命や財産を失ったり生活基盤が破壊されることが多い。国民の、殊に庶民の生活を破壊する人為的異常現象が、また発生している。消費税を10%引き上げ、法人税を10%引き下げるというわけである。消費税は収入の少ない高齢者や貧困層といわれる人にも例外なくかかり、増税分を大企業の減税の穴埋めに回そうというものである。だが国政のトップは「高齢者にかかる福祉の費用を新しい税率でほぼ賄えるようになる」と言ったと報じられている。

  「方便」ということばがあり、仏・菩薩が人びとを導くのにそれぞれの資質に応じてさまざまな手だてを用いることを意味する(『仏教入門』官坂宥勝)。「嘘と方便」という俚諺ほど罪意識の希薄なわが民族にとって重宝なことばはないように思われる。このひと言で嘘をつくとき良心の呵責を免れ、また嘘が発覚した際に有力な弁明になるからである。(『仏心仏語』梅庭昭寛)。以て銘すべし――である。

白樺の 木肌の色の 白の濃さ (『イリス通信』5月号より 愚作を転載)

(文)理事長 河原克美