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「虹」第10号

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虹10号

  • 夏を待ちつゝ -「異常」は気象だけではない-[理事長 河原克美]
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夏を待ちつゝ -「異常」は気象だけではない-

  年が明けても雪が少なかったが2月11日から18日まで殆ど毎日降り続いて、一日じゅう気温がプラスにならない日が続き、少し穏やかになったと思ったのも束の間、23日から24日にかけては暴風雪で北陸や北海道は特にひどく、随所で通行不能に成り行きに埋もれて命を落とすという悲しい事態も発生した。

  3月に入ってからの札幌は時折の寒気のあと21日から26日まで6日連続で日最高気温が10℃以上で、明治24年3月の連続5日間の記録を117年ぶりに更新したが「いずれの年も南高北低の気圧配置で南の移動性高気圧の影響で暖気が吹き込んだと考えられる」札幌管区気象台の相馬さんが解説した(『北海道新聞』3/27朝)。

  札幌の根雪が消えたと宣言されたのが3月25日(気象協会道支部)。道外各地の桜前線は平年より1週間早い、と報ぜられて10日ほど過ぎた4月2日に札幌のソメイヨシノの開花日は4月27日との報道に接したが「札幌での桜の開花日は3月1日から毎日の最高気温を累計して500℃に達した日」という定説に依拠すると平年の開花日(1971~2000年の平均値)が5月5日で、3月1日からの日平均最高気温の平均は7.6℃と計算され今年は8.6℃と1℃高いことになる。

  桜も梅も何もかも一斉に咲くように思える北海道の春。冬が厳しいだけに人びとの春を待つ気持は大層強い。ここまで来ると、5月、6月とぐんぐんと夏は進む。5月は札幌ではライラック祭り。昭和35年に“札幌の木”の勲章を貰って、それまで札幌の木と人びとが思い込んでいたアカシアの木を押しやってしまった。ライラックは明治の中期にアメリカから渡来したバルカン半島・アフガニスタンあたりが原産地の木で、和名はムラサキハシドイである。同属のただのハシドイは外来種ではなく白一色の花が特徴の道産子である。「ライラック」は英名、フランス語では「リラ」。リラという響きは物憂く悩み深く感傷的であるが、ライラックと呼ぶと明るく開放的で北海道の人びとは普通ライラックと呼んでいて殊に札幌の夏にふさわしい。ライラック祭が終ると6月は札幌神宮祭で市民は札幌祭と言って楽しんだが近年YOSAKOIソーランという祭が沢山の踊り手チームを動員しての夏の大きなイベントとなっている。

  この頃になるとアカシアもふさふさとした花を拡げる。誰もアカシアと呼ぶこの木は和名は針えん樹(はりえんじゅ:「えん」は木偏に鬼)で学名は Pseudo-Acacia とアカシアの前に「贋」という意味がついていて正しくはニセアカシアであって、アカシアとは別種であるが学名にこだわったら日常の用語としては不格好である上この木の趣を壊すので昔からニセをつけずに呼んで誰も不満に思わない。原産は北アメリカで明治14年に北海道に渡来したとのことである。

  4月1日から「後期高齢者医療制度」が始まった。後期高齢者とは「死んで行く人たち」ということで別に取扱うのか、という世論に押されて総理大臣が後期高齢者医療制度を「長寿医療制度」と名称を変えるよう指示したという報道があった。ニセアカシアの「贋」は「似て非なるもの」の意味でことばの用法として可愛らしさがあるが、「後期高齢者」と「長寿」の概念は同質ではなく、呼び名を変えても中身は「非なるもの」ではない。つまり呼び名を変えたら中身は変わらなくても国民は理解する可能性に賭けたわけで国民の顰蹙を買っただけであった。

  仏教界の用語に「方便」というのがある。真実に目覚めさせるため時には仮説(けせつ)を用いたり嘘を手段として用いる場合がこれである。俗に「嘘も方便」と言い、罪悪感の希薄な人びとにとっては仏教が認めているとして嘘つきの良心の呵責を緩和させ、更には嘘が発覚しても弁明がつきやすい。「後期高齢者」を「長寿」と呼び変えて批判を逸らそうという国民を馬鹿にした言動ではないか。

  年金迷子5,000万件は国家的サボタージュの結果であり、被害者は国民。社会保障関連費の毎年の自然増2,200億円を予算化せず医療や介護の制度に手を入れて圧縮し続け、今年は遂に75才以上の長寿の人に手を出したわけである。最近の何ヶ月か、マス・メディアが「政府は世論の動向を見きわめようとしている」との注釈つきで政治行動を報道することが多くなっている事に気づく。長寿の人たちが世論を造る時代が熟して来たわけである。

北こぶし うめももさくら ライラック アカシア咲いて 夏となる (愚作を一句)

(文)理事長 河原克美