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「虹」第6号

カテゴリ:機関紙『虹』

虹6号

  • 秋から冬へ -ナナカマド冬至って 誰が為に実を残す-[理事長 河原克美]
  • スタッフ紹介

秋から冬へ -ナナカマド冬至って 誰が為に実を残す-

  わが生協の最初の事務所である有料老人ホーム「イリスもとまち」は9月15日に竣工し、入居開始は9月21日、本格的な秋に入った時季であった。それからの毎日は、晴れたり曇ったり降ったりで時折「抜けるような秋晴れ」もある中で皆さんの新しい生活が始まった。

  その秋も10月上旬には大陸からの移動性高気圧に低気圧の通過が接して集中的な豪雨があり、そのあと比較的平穏に過ぎて札幌の初雪の日が至近30年平均で10月27日というのに11月に入っても雪を見ず、ひどい事に11月7日には佐呂間町に竜巻が発生して不幸な辞退となったが、札幌で初雪を見たのは11月12日であった。

  「イリスもとまち」から東へ200メートルも行くと「伏古・拓北通り」があり区画整理事業に伴って出来た広幅員道路で、中央分離帯が緑地になっていて緑地の中がサイクリングロードになっている。しかしこのサイクリングロードでサイクリングを楽しんでいる姿は見たこともなく、時折真剣な顔をしてウォーキングに励んでいる人か、ゆっくりと散策を楽しむ人の姿を見受ける結構な設えになっている。歩いて行くとその頭上を覆う藤棚がいくつもあり、緑地全体にハルニレ、カエデ類、ツツジ類、ナナカマドなど多種多様で、秋は紅葉と黄葉に常緑が混ざって綾をなす。

  「秋の野山や街路を彩る樹々の中で、ひときわ鮮やかなのがナナカマドの紅葉である。ことに真っ赤に光る真珠のような実、葉が落ちたあとも、また雪の中でもとりわけ美しい。本州と違って平地でもよく育つから北方的な植物と言えよう。在来種だか一般に植えられ始めたのは昭和7・8年頃からで主に公園や街路樹に登場」(『札幌歳時記』 さっぽろ文庫29)した樹であるとのことである。

  アイヌ民族出身の故知里真志保先生の手に成る『分類アイヌ語辞典・植物篇』にナナカマドの項を見ると、 kikinni 「キきンニ」魔神を追っぱらう木〔美幌〕、 inawnini 「イなウニニ」イナウ(棒・弊)になる木〔白浦〕、など土地により異なる語が7種続いたあと8番目に chikap-ipe 「チかピペ」鳥の食物=果実〔美幌〕とあって、美幌地方では鳥たちがこの赤い実を越冬の餌にしているのを表現していたのかと心なごむ思いがして来るが『札幌の樹々』(さっぽろ文庫38)には「アイヌ語でキキンニ(身代わり出て危険を追い払う木)、パセニ(偉大な木)、チカプセタンニ(鳥のエゾノコリンゴ)。ナナカマドという名前は木が堅いためかまどに何度入れてもなかなか燃えつきないことから来ている」とあるが知里先生の辞典には「アズキナシ」の項に chikapsetan-ni チかプセタンニ(鳥の果実の木)があり、「エゾノコリンゴ」の項に(1)セタル(果実) (2)セたンニ=セタルのなる木とある。「ナナカマド」という木の学名が sorbus commixta Held と記されているが「アズキナシ」も「エゾノコリンゴ」も「ナナカマド」とは全く異なる学名が添えられているので『札幌の樹々』で「チかプセタンニ=鳥のエゾノコリンゴ=ナナカマド」としたのは樹種の異なるものを同一とした間違いではないかと思われる。

  宋の仏書『碧巌録』に「百花春至って誰が為に咲く」ということばがあり、人びとに「ただ無心に尽くせ」と言っているわけであるが、これに擬えれば「ナナカマド冬至って誰が為に実を残す」ということになる。花たちにもナナカマドにも心があればその心は布施の心である。布施の真髄は布施したことすら自覚しないことだという。

布施置きて 我は乞ひ祷む あざむかず 直に率行きて 天路しらしめ

万葉集にある山上憶良の作か、という歌である。――お布施を置いて祈りますので惑わず天に行く道をすぐに連れて行って教えてください――というわけでこれでは布施ではなく収賄である。

  アメリカで上・下両議会の選挙が行われ、ブッシュ大統領を擁する共和党は野党民主党に両院とも議員数の過半を取られ敗北したが、深化する社会的格差拡大、政治腐敗、正義なきイラク戦争の3点が共和党の敗因であったと伝えられている。今、収賄容疑で我が国の知事二人が検察の手にかかっている。政治家の犯罪発生率は洋の東西を問わず国民全体のそれをずっと上まわるもののように見える。教育基本法をめぐって政府主催のタウンミーティングでは政府機関が発言のサクラを送り込んでいわゆる「やらせ」で都合良い結果を画策し、本来は民主的手続きのためのタウンミーティングを謀畧の具にし多数を頼んで民主主義を蹂躙した。

  受け皿のないまま介護・療養病床大幅削減、高齢者医療費負担増、介護保険制度の見直しという名の後退などが行われ、老人健康保険を別建にして国民負担をさらに強化するプログラム。新首相になっても背後にあるものは少しも変わっていない。今、日本の政治の舞台で起きている問題は間違いなく孫や曾孫の時代の日本の姿に影響を及ぼす。歳を取ってもこの先が余りないからと諦めてはいけないとしみじみ思うのだ

星座背に 裸のポプラ 音も無し (愚作を一句)

(文)理事長 河原克美