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「虹」第2号

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虹2号

  • 春雪の時季に -「我慢」がもたらす不幸-[理事長 河原克美]
  • もとまち小史

春雪の時季に -「我慢」がもたらす不幸-

わが背子が 衣はるさめ 降るごとに 野辺の緑ぞ 色まさりける (紀 貫之 『古今集』)

  春雨が降るたびに野辺の緑が色を増す様をいとしい人が衣を張ると春をかけて詠んだものであろう。

  『札幌の短歌』(さっぽろ文庫9)に載っている来札の歌人、在札の歌人200人の千首を調べたところ「春雨」または「春の雨」の字句がある歌は「時計塔の文字盤に春の雨けぶり並木裸のまま芽を吹かぬ」(山名康郎)の一首だけであった。長い間札幌に暮らしているが春雨の感慨は乏しく春雪から受ける季節感のインパクトが比べようもなく強い。

  『理科年表』(2006版)に並んだ数字を読み取ると3月の降雪日数は北海道では10ヶ所の観測点のうち釧路、帯広、根室が16日から18日で、その他の札幌を含む7観測点で20日から25.5日も雪降りの日があるのがわかる。道外では東北の8ヶ所が11日から19日、北陸と新潟で3ヶ所が12日弱、軽井沢と長野が13日、富士山の17日が突出し岐阜の高山が14日。全国82ヶ所の観測点から道内を除く71ヶ所のうち53ヶ所が10日未満でその多くは0日を含んだ5日未満となっている。

  4月ともなれば雪の降る日は道内では網走の11日をトップに9ヶ所が10日弱、道外では東北がおしなべて5日以下、富士山の14.6日は例外で、0または小数点の地点が残る72ヶ所となってくる。

  同じやり方で降水量の平均値を調べると大雑把に言って3月と4月の降水量は道外では道内の2倍で、北海道では重く湿った春の雪がこの時季の天からの贈り物であり、春雨は道外の季節の主人公であることが裏付けられて、北海道では「春雨だ。濡れて行こう」といった粋な台詞は通用しないわけである。この原稿を推敲していた3月29日は前夜から荒れ模様で、濡れ雪が吹き付け、その思いが確信になっていくのを自覚したものである。

  3月22日夜のNHKテレビの放送によると、この日、東京で桜の開花宣言となったが今年の開花日の特徴は、九州、四国、中国と、西の方でいっせいに開花したということで平年より1週間から10日も早く、梅の開花が遅れていることも加わって梅と桜の開花日の間隔が短くなっているとのことで、平年は梅と桜が同時に開花する――30年間統計で5月5日――ことになっている札幌ではどうなることかと興味をそそったが4月5日になって「札幌の桜は5月6日」と宣言があり、さて梅が後を追うという逆転現象もあるかと、実生活に関わりのない妙な不安にかられる。

  ところで、現実社会に生きているのだからこうして天気のことや花暦ばかりに気を取られて気楽に構えてばかりには行かない。4月1日、新しい年度。わがさっぽろ高齢者福祉生協も新しい事業年度の出発点に立つ。公の会計年度、学校はこの日から新学期で新しい年度が始まる。新しい年度の国家予算、一般会計で80兆円弱。財源確保のため近い将来消費税を10%にと財界や政治家が言い続けている。1989年、消費税が始まってから新年度予算までこの国民負担額は174兆8千億円。この間、法人からの税収減は159兆8千億円で国民の負担分の殆どが法人の減税に充当され、大企業の収益は大幅に伸びたという。2002年から新年度予算までの社会保障関連費の自然増分は75%しか予算化せず、医療制度や介護保険制度の見直しという名の国民負担増となって来ている。他国の戦争に参加する無駄遣いなどやめ、法人税率を元に戻して国民負担を軽減するのが今求められている政治というものではないかと年度の変わり目にしみじみ思うのだ。

  このようなことを我慢して耐えしのんでいるだけではいけない。「我慢とは高慢な事で他をさげすみ自分を偉く思うこと。もとは仏教語で貪・瞋・癡・慢の四根本煩悩のうちに教える」(『仏教語入門』 宮坂宥勝)とあり、為政者の「我慢」が国民に不幸をもたらしているのではないか。

  アメリカの著名な言語学者ノウム・チョムスキーは言っている。「彼ら(アメリカの為政者たち=河原註)が言う“自由市場”が何を指すかは実に露骨なのです。発展途上国やアメリカ国内で増大しつつある貧困層には“自由市場”を絶賛しながら押しつける。乳飲み子を抱いた母親には厳しく説教をして“自主自立を目指せ”というくせに、政府にずるずるべったりの経営者や投資家は甘やかし続ける。金持ち連中にしてみれば、まさに福祉国家バンザイっていう心境なんですよ」(『チョムスキー』デイヴィッド・コグズウェル著、佐藤雅彦訳)これはアメリカのことをいっているのだが…。

春の雪 樹木の新芽も 身を固め (愚作を一句)

(文)理事長 河原克美